日本生活習慣病予防協会(JPALD)の調査によると、令和5年時点での糖尿病の患者数は、実に552万人を上回っています。
そして歯周病治療のページでもお伝えしているとおり、糖尿病と歯周病は、片方が悪化するともう片方も悪くなりやすい、互いに影響し合う密接な関係にあることを忘れてはいけません。
高血糖状態が続くと、歯茎の抵抗力が落ちて歯周病が進行しやすくなります。同時に、歯周病による炎症は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを邪魔してしまいます。
つまり「高血糖が歯周病を進め、歯周病がさらに血糖値を上げる」という悪循環が起きてしまうのです。
そこで今回は、看過してはいけない糖尿病と歯周病の関係性や、歯科を受診する際のポイント、日頃のセルフケアをどのように行うかについて、詳しく解説したいと思います。
糖尿病と歯周病は互いに悪化させ合う関係にある

冒頭でも触れたように、糖尿病と歯周病は、片方の病気があると、もう片方の病気も悪くなりやすい関係です。血糖値の高い状態が続くと、歯茎は細菌に対する守りが弱くなってしまいます。
この理由は、大きく2つあります。
1つ目は、白血球の働きが鈍ることです。白血球は、体に入った細菌と戦う役割を担っていますが、血液中の糖が多い環境では、白血球の働きが落ち、歯周病菌の侵入を食い止めにくくなるとされています。
2つ目は、歯茎の細い血管が傷みやすくなることです。血管が傷むと血流が悪くなり、酸素や栄養が十分に届きません。その結果、傷ついた組織の修復も遅れがちになります。
歯周病も血糖値に悪影響を及ぼす

一方で歯周病も血糖値に悪い影響を与えます。
歯茎に炎症が起きると、そこから炎症性サイトカインという物質が出て、血液に乗って全身へ運ばれます。この物質が、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを阻害してしまうのです。
これは鍵と鍵穴にたとえるとイメージしやすいでしょう。インスリンは、細胞の扉を開けて糖を取り込ませる鍵です。ところが、鍵穴に砂が詰まったような状態になると、鍵が届いていても扉がうまく開きません。結果的に行き場を失った糖が血液中にあふれ、血糖値が高くなるということです。
その結果、こちらも冒頭でお話ししたとおり、「高血糖が歯周病を進め、歯周病がさらに血糖値を上げる」という悪循環が起きやすくなるのです。
歯周病を治療すると血糖値の改善が期待できる
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1〜2か月の血糖値の平均的な状態を表す数値です。糖尿病の治療では、この値を安定させることが目標になります。
歯周治療でHbA1cは約0.5%改善する

日本歯周病学会のガイドライン(2023年版)では、糖尿病を有する歯周病患者に歯周基本治療を行うことで、HbA1cは約0.5%改善するとされています。
たとえばHbA1cが8.0%の人なら、7.5%前後まで下がる計算です(あくまで平均値で、効果には個人差があります)。
学会も歯周病治療を推奨

0.5%と聞いても、どのくらいの効果なのかイメージしにくいかもしれませんね。同ガイドラインには、比較の目安として糖尿病の飲み薬のデータも紹介されています。
代表的な薬のひとつであるメトホルミンを1日750mg、14週間服用した場合、HbA1cの改善幅は約0.67%でした。ここから、改善幅を単純に比較すると、0.5÷0.67×100=約75%。つまり、歯周病治療によるHbA1cの改善幅は、治療薬であるメトホルミンの約75%に相当します。
もちろんこれは異なる研究の結果を並べた大まかな比較で、すべての研究が同じ結果を示したわけではありません。
ただ、このような研究結果を踏まえ、日本歯周病学会のガイドラインでは、糖尿病がある歯周病患者への歯周基本治療を「強く推奨する」としています。
また、日本糖尿病学会の診療ガイドライン(2024年)にも、2型糖尿病の人に歯周治療をすすめる内容が盛り込まれています。
歯周病治療だけを行えば良いわけではないことに注意

ただし、ここで注意したいのは、歯周病治療が糖尿病の薬や食事療法の「代わりになる」わけではないという点です。
歯茎の状態が良くなったからといって、自己判断で薬を減らしたり、やめたりするのは危険です。歯周病治療によってHbA1cが下がった場合でも、薬の調整については必ず主治医に相談し、判断してもらうようにしてください。
糖尿病の人が歯科を受診するときのポイント
糖尿病がある方は、以下の準備をしてから歯科を受診すると、治療がスムーズに進みます。
ポイント① 糖尿病であることと、今の数値を伝える

歯科医師が知りたいのは、糖尿病であることに加え、血糖のコントロールがどのくらいできているかです。それを見て治療の進め方や、抜歯のような外科処置をいつ行うかを判断します。
受診のときは、次のものを持っていくことをおすすめします。
- 最近の血液検査の結果(HbA1cの値がわかるもの)
- お薬手帳(飲み薬やインスリンの種類がわかるもの)
- 糖尿病連携手帳(お持ちの場合)
糖尿病連携手帳には歯科の記録欄があり、内科と歯科で情報をやりとりするのに役立ちます。低血糖を起こしたことがある方は、そのことも必ず伝えてください。
ポイント② 治療の流れを知っておく

また、治療の流れを知っておくのも有用です。歯周病の治療は、以下の流れで進みます。
| 1. 検査 | 歯周ポケットの深さや歯茎からの出血、レントゲンで骨の状態を確認する |
|---|---|
| 2. 歯石取り (スケーリング) |
歯の表面や歯茎の近くに付いた歯石を取り除く |
| 3. 歯茎の中の歯石取り (ルートプレーニング) |
歯周ポケットの奥にこびりついた歯石を取り、歯の根の表面をなめらかに整える |
| 4. 再検査 | 歯茎の状態がどれだけ良くなったかを確かめる |
歯茎の中の処置は、口の中をいくつかの範囲に区切って、数回に分けて行うのが一般的です。
ポイント③ 3か月に1回を目安に定期健診に通う

歯周病は、いったん治っても再発しやすい病気です。特に糖尿病がある場合は、炎症がぶり返しやすい傾向があります。
定期検診の間隔は、糖尿病のない人で3〜6か月に1回が目安ですが、糖尿病のある人は、3か月以内とやや短めの間隔での検診が推奨されています。
定期健診の重要性は、定期的な歯のメンテナンスが必要な理由とはのコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参考になさってください。
糖尿病の人の歯周病対策はセルフケアも重要
歯科で歯石を取っても、プラークは数日でまた付着し始めます。治療で整えた状態を保つためには、毎日のケアも欠かせません。
毎日のブラッシングは力を入れず、正しい方法で

糖尿病がある方に、まず気をつけていただきたいのは歯磨きの際の力加減です。歯茎が傷つきやすく、治りも遅いため、ゴシゴシ磨くと歯茎が下がってしまう歯肉退縮(しにくたいしゅく)を起こすことがあります。
正しいブラッシングのポイントのコラムでもお伝えしたとおり、歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握り、毛先を歯と歯茎の境目に当てて、小刻みに動かすようにしましょう。
正しい歯磨きの仕方が分からないという方は、お気軽に桜新町駅前歯科へご相談ください。歯科衛生士によるTBI(Tooth Brushing Instruction:歯磨き指導)を通じて、適切な歯磨き方法をお伝えします。
こまめな水分補給とよく噛むことを意識

血糖値が高い状態が続くと、体内の水分が尿として出ていきやすく、口も乾きやすくなるため、乾きを感じる方はこまめな水分補給と、よく噛んで食べることを意識してください。
禁煙

たばこを吸う方は、禁煙することも治療の一部です。喫煙は歯茎の血流を悪くし、歯周病を進行させます。
やっかいなのは、血流が悪いせいで歯茎からの出血が起きにくくなることです。危険信号が出ないまま進むため、気づいたときには顎の骨が下がっていたというケースもあります。
内科での血糖管理も忘れずに

そして内科での血糖管理も忘れないでください。血糖値が安定している方は、歯周病が進みにくいことがわかっています。
食事や運動で血糖値を整えることは、歯茎を守ることにつながります。歯周病治療によって炎症が減れば、血糖値のコントロールもしやすくなります。
糖尿病と歯周病の関係を理解して全身の健康を守ろう

糖尿病と歯周病は、互いに悪化させ合う関係にありますが、裏を返せば歯周病を治療することで、糖尿病の改善にもつながっていきます。
ただし、歯周病治療は全ての糖尿病治療の代わりになるわけではないため、自己判断で薬を減らすようなことはせず、主治医の指示に従うことが大切です。
桜新町駅前歯科は、お口の健康から全身の健康を守っていくことを重視しています。糖尿病を治療中の方も、内科での血糖管理と並行して通っていただけるように配慮し、治療内容やお薬についてしっかりとお話しを伺ったうえで歯科の治療を進めますので、安心してお申し出ください。
「歯茎の腫れや出血が気になる」「内科で歯科を受診するよう勧められた」「糖尿病があるけれど歯科で治療を受けられるか不安…」といった方も、桜新町駅すぐそばの桜新町駅前歯科へお気軽にご相談ください。



