最近の桜新町駅前歯科ブログでは、抜歯が検討される際に抜歯を回避する方法(エクストリュージョン、歯周再生治療)や、やむなく歯を失ってしまった場合の選択肢(インプラントやブリッジ、入れ歯、自家歯牙移植など)について解説してきました。
今回のテーマは、抜歯の前に治療方針を決めておくことの重要性です。
もちろん、可能な限りご自身の歯を残すことを考えるのが第一ですが、さまざまな方法を検討したうえで、やはり抜歯が避けられないと判断されたとき、次に考えるべきは「歯を抜いた後にどうするか」になります。
ただ、実際には「抜歯は決まったけれど、その後のことはまだ決めていない」というケースも少なくありません。
実は、抜歯後の治療方針は、抜歯する『前』に決めておくことが非常に大切です。事前に方針を立てておくかどうかで、その後の治療の選択肢や身体的・経済的な負担が大きく変わってくることがあるためです。
歯を抜いたあと、お口の中では何が起こる?
治療方針の重要性をお伝えする前に、まずは「歯を抜くと何が起きるのか」を知っておきましょう。
骨と歯茎が痩せていく

歯を抜いたあと、お口の中ではいくつかの大きな変化が起こります。中でも知っておいていただきたいのが、「骨」と「歯茎」の変化です。
歯は歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる顎の骨に支えられています。ところが歯を失うと、骨が歯を支える必要がなくなるため、歯槽骨が少しずつ痩せていきます。
これは骨吸収(こつきゅうしゅう)と呼ばれる現象で、年齢や健康状態に関係なく、誰にでも自然に起こる体の反応です。しかも抜歯直後から始まり、最初の数ヶ月は変化が大きいとされています。
骨が減るのに伴って歯茎の形も変わっていきます。特に前歯のあたりでは、歯茎が下がると見た目にも影響が出やすく、笑った時に気になるという方も少なくありません。
歯を抜いたまま放置すると様々な問題が生じる

時間が経つにつれて変化は進み、次のような問題につながる可能性があります。
歯を失ったまま放置していると、隣の歯が傾いてきたり、噛み合っていた反対側の歯が伸びてきたりすることで、周囲の歯にも影響を及ぼすことがあります。
放置してしまうと、一部の歯に負担が集中したり、結果的に歯の寿命を縮めたりなどして、数年後に大きな治療が必要になるケースも少なくありません。
治療方針を抜歯前に決めておくことで得られるメリット
上でお話ししたようなリスクを回避するためには、抜歯した後にどう治療するかを、抜歯『前』の段階で考えておくことが非常に重要になってくるのがご理解いただけるでしょうか。
さらに、抜歯前に抜歯後の治療を検討しておくと、以下のようなメリットも生まれます。
将来の治療の選択肢が広がる

抜歯前に治療方針を決めておくと、将来の治療の選択肢の幅が広がります。
たとえば、将来的にインプラントを考えている場合、抜歯と同時に骨を保護する処置(後述するリッジプリザベーションなど)を行うことで、その後のインプラント治療をスムーズに進めやすくなることがあります。
状況によっては、抜歯と同時にインプラントを埋め込む抜歯即時インプラントが可能になるケースもあるでしょう。
こうした判断は、抜歯前に方針を決めていなければ行えないものです。
患者さんの負担を減らせる可能性がある

抜歯前にしっかり計画を立てることは、患者さんの負担軽減にもつながります。たとえば、外科処置の回数や通院の頻度、治療にかかるトータルの期間、術後の腫れや痛み、費用面の負担などを抑えられる可能性があります。
もちろん、すべてのケースで必ず負担が減るわけではありません。お口の状態や全身の健康状態によっては、段階を踏んだ方が安全な場合もあります。
しかし、適切なタイミングで必要な処置を行うことで、結果的に治療をシンプルに進められるケースは多くあります。
抜歯前に方針を決めておくと受けられる処置
事前に方針を立てておくことで選択肢に入ってくる代表的な処置を、いくつかご紹介しましょう。
リッジプリザベーション

リッジプリザベーション(※)とは、歯を抜いた後の穴(抜歯窩:ばっしか)に、骨のもとになる材料(骨補填材)を詰め、骨や歯茎の形をできるだけ維持する処置です。
特に、将来的にインプラントを予定している方や、骨の減少リスクが高い方、前歯部で審美性が重要になるといったケースでは、検討されることがある処置です。
ソケットプリザベーションと呼ばれることもあり、どちらもほぼ同じ処置を指します。
(※)リッジプリザベーション(ソケットプリザベーション)について詳しくは、提携医院であるインプラントオフィス大通の骨の減少を予防する『ソケットプリザベーション』とはのコラムをご参考になさってください。
抜歯即時のアプローチ

リッジプリザベーションが骨を守る処置であるのに対し、もう一歩踏み込んで、抜歯と同時に次の治療まで一気に行うのが抜歯即時というアプローチです。
代表的なものに抜歯即時インプラント(歯を抜いたその日にインプラントを埋め込む※)や抜歯即時自家歯牙移植(歯を抜いたその場に別の歯を移植する)などがあります。
歯を抜いた直後は、まだ骨の量も歯茎の形もある程度保たれているため、そのタイミングを活かして治療を行うことで、生体組織の変化を抑えやすくなります。
また、抜歯と同時に次の処置を行うため、外科的治療の回数を減らし、トータルの治療期間も短縮できるなど、患者さんの身体的・心理的な負担を軽減することにもつながります。
ただし、リッジプリザベーションも抜歯即時のアプローチも、抜歯後に必ず実施する処置というわけではなく、炎症が強い場合や、骨の状態や噛み合わせの状態が良くない場合は行いません。綿密な検査をし、将来の治療方針を踏まえて、慎重に判断することが大切です。
(※)抜歯即時インプラントについて詳しくは、提携医院である札幌のポラリス歯科の抜歯即時インプラント・即時荷重インプラントとは?のコラムをご参考になさってください。
抜歯して時間が経った後、骨を増やすなら

リッジプリザベーションや抜歯即時治療は、いずれも抜歯前に方針を決めていたからこそ受けられる処置です。抜歯後に時間が経ってしまった後に、骨を増やすことを考える場合はGBR(Guided Bone Regeneration:骨再生誘導法)が検討されることがあります。
GBRは、骨造成(こつぞうせい※)という不足した骨を増やすための処置の一つで、インプラント治療で骨の量が不足しているケースでは、欠かせないものになることがあります。
しかしその一方で、外科的処置が増えて患者さんの負担が大きくなる面があり、合併症として傷口が開いてしまうリスクもあります。
もちろん、インプラント治療の際にはよく行われる処置の一つであり、GBRが悪いというわけでは決してありません。
ただ、抜歯と同時に行うことができるリッジプリザベーションは、こういった負担やリスクを低減できるという点で優れていると言えるでしょう。リッジプリザベーションが、術者にも患者にも優しい治療とされるのはそのためです。
(※)骨造成については、提携医院であるインプラントオフィス大通のインプラント治療における骨造成とはのコラムをご参考になさってください。
将来を見据え、「どう備えるか」の治療を

今回お伝えしてきたように、抜歯の前に治療方針を決めておくことで、骨の減少を防ぐリッジプリザベーションや、抜歯と同時に治療を進める抜歯即時のアプローチなど、身体的にも経済的にも負担の少ない選択肢を選べる可能性が広がります。
反対に、何も決めないまま抜歯をして放置してしまうと、骨が痩せて噛み合わせが崩れ、いざ治療をしたいと思ったときには大がかりな治療が必要になるなど、本来避けられたはずのリスクや負担を抱えてしまうことになりかねません。
どの治療法が正解かは、患者さんのお口の状態や生活スタイル、大切にしたい価値観によって一人ひとり異なります。だからこそ、「歯を残せるかどうか」をしっかり確認したうえで、抜歯が必要な場合には「抜いた後どうするか」まで見据えた治療計画を抜く前の段階で立てておくことがとても大切なのです。
桜新町駅前歯科では、その場しのぎではなく、常に長期的視点に立った治療をご提案いたします。抜歯が必要と言われた方も、本当に抜歯が必要なのか、「抜いたあとをどうするか」まで含めて気になることがあれば、桜新町駅すぐそばの桜新町駅前歯科へお気軽にお問い合わせください。


