小児歯科のページでもお話ししていますが、お子さんの歯並びを整える小児矯正は、将来のお子さんご自身のお口の健康にも繋がる大切な治療です。
しかし、治療は数年にわたることもあり、お子さん一人の力で乗り越えるのは簡単ではありません。特に小さなお子さんでは、治療に対して不安に思うことも多いはずです。
だからこそ、歯科医師とお子さん、そして親御さんの連携が必要不可欠になってきます。小児矯正は歯科医師・お子さん・そして保護者の三者で取り組む、いわばチーム治療とも言えるでしょう。
そこで今回は、お子さんの矯正治療中に保護者が担うべき役割やサポート方法、よくある質問への回答まで、コラムで詳しくお伝えしていきます。
お子さんの矯正治療は保護者のサポートが重要に
小児矯正は、なぜ保護者の協力が重要になるのか、大人の矯正との違いにも触れながら説明します。
矯正治療中のお子さんのお口の状態を把握する
成長期を活用できる小児矯正
子供の矯正が大人の矯正と大きく違うのは、体が成長期にあることです。小児矯正では、顎の骨の成長を活用し、永久歯が並ぶためのスペースを確保することができます。成長が終わっている大人の矯正治療では、これができません。
成長期のメリットを活かせる小児矯正ですが、それはもちろん、矯正装置を正しく使用できているということが前提になります。
また、指しゃぶりや口呼吸、頬杖といった歯並びや顎の成長に影響を与えかねないお口の癖の改善も、治療と並行して進めていくことになります。お子さんだけの力で、これらの治療にスムーズに対応していくのはさすがに難しいと言えます。
だからこそ、矯正装置を正しく使えているか、お口周りの癖が出ていないかなど、身近にいる親御さんが、日頃からお子さんのお口の状態をチェックしてあげることが、矯正治療の成功のポイントになってくるのです。
お子さん一人では難しい「自己管理」を支える
矯正治療中は、毎日決められた時間だけ装置を装着したり、装置の周りを丁寧に歯磨きしたりすることが求められます。こうした細かなルールを守り続けるのは、大人にとっても根気がいることでしょう。
もし装置の管理や歯磨きが不十分になると、治療が計画通りに進まなくなったり、虫歯のリスクが高まったりすることもあります。
そのため、「治療を頑張ったらカレンダーにシールを貼る」「仕上げ磨きの際にたくさん褒めてあげる」といった工夫で、保護者の方がお子さんのやる気を引き出してあげることが大切です。
お子さんの矯正治療中、保護者の方が担う役割は?
ではここからは、お子さんの矯正治療をスムーズに進めるために、保護者の方にお願いしたい役割について、具体的にご紹介していきましょう。
通院のスケジュール管理
矯正治療は、お口の状態の変化に合わせて装置を調整したり、治療が計画通り進んでいるかを確認したりするため、定期的な通院が欠かせません。もし通院が滞ってしまうと、治療期間が延びてしまうこともありますので、注意してください。
もちろん、学校や習い事などで忙しいかと思いますが、通院と両立していけるように、予定を調整してあげることは保護者の方の大切な役割の一つです。
歯科医師とのコミュニケーション
診察の際、お子さん自身が自分の症状や、困っていることを的確に伝えるのは難しいものです。特に小さなお子さんならなおさらでしょう。
そのため歯科医師は、親御さんからお話しを伺うことも多くなりますので、前述のとおり、なるべくお子さんの状況をきちんと把握しておいてください。
「食事の時、装置を嫌がることが増えました」など、ご家庭での様子を伝えることで、歯科医院側も適切な対応ができます。事前に質問したいことをメモにまとめておくのも有用ですね。
毎日の装置の管理と声かけ
前回、矯正治療中の注意点と正しい過ごし方のコラムで解説したように、矯正装置には固定式と可撤式(かてつしき:取り外し可能なもの)があります。特に可撤式装置やマウスピース矯正では、装着時間を守らなければ効果が得られません。
お子さんは、装置をつけ忘れたり、嫌がったりすることもあります。そんなとき、「ちゃんと着けたかな?」といった確認や、「頑張っているね」という前向きな声かけが、治療を続ける大きな力になります。
また、取り外し式の装置は清潔に保つことも大切です。洗浄剤を使うなど、衛生的な管理も一緒に行うようにしてあげてください。万が一装置が壊れたり、紛失した場合は、速やかに歯科医院へ連絡しましょう。
食生活の見直し
こちらも矯正治療中の注意点と正しい過ごし方のコラムでお伝えしましたが、矯正治療中は、装置が壊れやすい硬い食べ物や、粘着性の食品を避けるのが望ましいと言えます。
例えば、キャラメル・ガム・氷などは矯正装置のトラブルの原因になります。特に固定式装置の使用期間中はなるべく控えるようにしましょう。
また、砂糖を多く含むお菓子やジュースなども虫歯リスクを高め、治療の妨げになってしまいますので、注意してください。
他にも、装置の調整後は一番歯に力がかかり、痛みが出やすくなります。そんな時は、食材を小さく切ったり、柔らかく煮込んだスープにしたりするなど、歯に掛かる負担の少ないメニューを用意してあげると良いでしょう。
毎日の仕上げ磨きと口腔ケア
矯正装置があると磨き残しが増えやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。特に小学生は、自分だけで十分に磨けないことが多いため、保護者による仕上げ磨きやチェックが重要になります。
毎日の仕上げ磨きはもちろん、ちゃんと磨けているかも定期的に確認してあげてください。夜寝ている間は唾液の分泌が減って虫歯菌が活動しやすくなるため、就寝前のケアは特に丁寧に行いましょう。
歯ブラシだけでは難しい部分は、歯間ブラシやデンタルフロスを活用するのも効果的です。
お子さんのメンタルサポート
矯正中は「見た目が気になる」「装置が痛い」といった不安を抱えることがあります。そんな時に、保護者がきちんと声をかけてあげることで、お子さんのやる気を支えることにつながります。
「きれいな歯並びになってきたね」「毎日頑張っていてえらいね」と、ぜひ前向きなメッセージを言葉に出して、お子さんに伝えてあげてください。
こんな時どうする?子供の矯正治療でよくある質問
治療期間中は、保護者の方も様々な疑問や不安に直面することがあるでしょう。ここでは、実際によくいただくご質問とその対処法についてご紹介します。
Q1. 子供が痛がっています。どうすれば良いでしょうか?
A. 矯正装置を調整した後の2~3日は、歯が動くために痛みを感じやすい期間です。これは治療が順調に進んでいる証拠でもあるため、過度に心配する必要はありません。
痛みが強い場合は、お粥やスープなど、あまり噛まなくても食べられる、柔らかい食事を用意してあげましょう。
それでもつらい様子でしたら、歯科医師に相談の上で、市販されている小児用の鎮痛剤を服用することも一つの方法です。
もし痛みが何日も続いたり、装置が唇や頬に当たって痛むような場合は、別の原因が考えられるため、すぐに歯科医院へ連絡してください。
Q2. 学校でからかわれたりしないか、心配しています。
A. まずは、何よりもお子さんの不安に寄り添う姿勢が大切です。
そのうえで、「きれいな歯並びになるための大切なステップだよ」「かっこよくなるための変身中だね」など、前述のように、矯正治療に対して前向きなイメージを持てるような言葉をかけてあげるのが良いでしょう。
最近では、矯正治療を受けるお子さんは決して珍しくありません。事前に学校の先生に一言伝えておくと、学校生活での配慮をお願いしやすくなります。
Q3. 装置を付けるのを嫌がるようになったら…
A. まずは感情的に叱るのではなく、「どうして嫌なのかな?」とお子さんの話をじっくりと聞いてあげることが大切です。
理由が「痛い」「話しにくい」といったことであれば、歯科医院で装置を調整することで解決できるかもしれません。
シンプルに面倒に感じているようであれば、治療の目標を再確認したり、治療経過に合わせてにシールを貼るなど、お子さんが頑張っていることを明確に「見える化」するのも効果的です。
矯正治療はご家族の共通意識が大切
今回お伝えしてきたように、小児矯正に際しては、親御さんのサポートや前向きな声かけが、小さなお子さんが治療を乗り越える大きな力になっていきます。
ただ、保護者の方の役割は、通院や装置の管理、日々の状態確認から心のケアまで、どうしても多岐にわたります。大変に感じるかもしれませんが、ご安心ください。桜新町駅前歯科は、お子さんはもちろん、矯正治療を支えるご家族の皆さんも、誠実にサポートしてまいります。
治療中の悩みや不安は、ご家庭だけで抱え込まないようにしましょう。ご家庭でのケアの方法や、お子さんの性格に合わせたやる気の引き出し方など、一緒に考えていきますので、お子さんの矯正治療をお考えの際は、桜新町駅すぐそばの桜新町駅前歯科にお気軽にご相談ください。