現代の虫歯治療では、歯の欠けたところを人工材料の詰め物や被せ物で補う修復治療が中心です。
ただ、一口に人工材料と言っても、その種類はたくさんあり、使っている材料に関しては国によっても差があることをご存じでしょうか?
今回は、日本と海外(欧米諸国)でよく用いられる修復治療の材質に焦点を当てて、それぞれの特徴や違いについて紹介します。
日本でよく使われている歯科材料
さて、日本の歯科治療でよく使われている人工材料の材質について見ていきましょう。ここでは、セラミックなどの自由診療のものは一旦除いておき、保険適用のものを中心に解説します。
コンポジットレジン
コンポジットレジンは、白色のプラスチック系の歯科材料です。光を当てると固まるタイプと、粉と液を混ぜて化学反応で固まるタイプなどがあります。
光を当てると固まるタイプは、主に小さな虫歯の治療に使われ、一方、粉と液を混ぜてるタイプは、歯型を取った後の仮の蓋や、入れ歯治療の際などに多く用いられます。
さらに、ブロック状のコンポジットレジンもあり、これらは削り出して、CAD/CAM冠(キャドキャムかん)というクラウン(被せ物)やCAD/CAMインレー(詰め物)として使われています。
CAD/CAMとは、Computer-Aided Design/Computer-Aided Manufacturingの略で、CAD/CAM冠やCAD/CAMインレーは、口腔内のデータを元に、コンピューターが設計・製作する被せ物や詰め物を指します。
コンポジットレジンは、その使い勝手の良さに加え、見た目が自然で目立ちにくいというメリットがあります。また、幅広い虫歯治療に対応できることから、日本の歯科治療において非常に多く使われている材料の一つです。
金銀パラジウム合金
金銀パラジウム合金は、いわゆる銀歯に使われている金属材料で、通称「金パラ」と呼ばれています。その成分はJIS規格によって金12%、銀50%、パラジウム20%と決められています。
通常、合金の名前は含有量の多い順に並べられるものなのですが、「金」「銀」「パラジウム」という順番で表記されているのが特徴的です。
日本の国民健康保険では、歯科治療も広くカバーしており、比較的低価格で治療を受けられます。
金銀パラジウム合金は、保険診療の対象であるため、長らく日本の歯科医療においてクラウン(被せ物)やインレー(詰め物)の材料として圧倒的なシェアを誇っていました。
しかし近年では、先ほどご説明したCAD/CAM冠やCAD/CAMインレーといった新しい治療法が普及し、金銀パラジウム合金の使用頻度は徐々に減少傾向にあります。
チタン
チタンは、2020年から保険診療で利用できるようになった比較的新しい金属材料です。当初は奥歯のクラウン(被せ物)に用いられていましたが、現在では前歯のクラウンにも適用範囲が広がっています。
見た目は、金銀パラジウム合金の銀歯と似ていますが、チタンの最大のメリットは、金属アレルギーのリスクが低いことです。金属アレルギーをお持ちの方でも比較的安心して使用できる素材と言えるでしょう。
また、チタンには、骨に埋め込まれると骨と結合するという性質(これをオッセオインテグレーションといいます)があり、インプラントの材料としても利用されています。
海外(欧米)でよく使われている歯科材料は?
では続いて、海外で使われている歯科材料を見ていきましょう。
コンポジットレジン
日本でも使われるコンポジットレジンは、欧米でも広く普及している歯科材料です。その人気の背景には使い勝手の良さに加え、金属材料を使用しないことによる、治療コストの抑制が関係していると考えられます。
セラミック
実は海外ではセラミック材料がよく使われています。セラミック治療の利点のコラムでも解説しましたが、セラミックには多くのメリットがあります。
なぜセラミックが多く使用されるかというと、そのメリットだけではなく、大半の外国では日本のような国民皆保険制度が整備されていないこと、歯科治療が保険診療の対象となっている国がさらに限られているという背景が影響していると考えられます。
また、一部の国では、金属材料が保険診療の対象外となっていることもセラミックの利用を後押ししている要因の一つでしょう。
このように、欧米では歯科治療自体が高額であるため、金属材料とセラミック材料の費用の差に大きな違いがないのも理由に挙げられます。つまり、どうせ費用をかけるなら、より審美性の高いセラミックを選ぶという考え方が一般的になっているのでしょう。
金合金
金合金は、金の含有量が50%以上の合金です。一般的に金歯の材料として知られており、古くから歯科医療に用いられてきました。
金は生体親和性、つまり人体との相性が良く、柔らかく加工もしやすいということから、欧米をはじめとする海外で広く利用されています。
実は金銀パラジウム合金は日本独自
最後に、日本の金属材料で主流とも言える金銀パラジウム合金についてお話しします。
意外に思われるかもしれませんが、日本で歯科治療で広く使われている金銀パラジウム合金は、日本独自の金属材料です。
パラジウムは欧米では使用が禁止されている
金銀パラジウム合金が使われない理由は、パラジウムにあります。金銀パラジウム合金の2番目に多い成分であるパラジウムは、実は欧米諸国では使用が禁止されているのです。
金銀パラジウム合金は、口腔内での腐食によって金属イオンが溶け出し、これがアレルギー反応を引き起こす原因となることもあるからです。
このようなパラジウムの特性を勘案し、30年以上前のスウェーデンで妊婦や小児への使用が禁止されました。その数年後にはドイツでも妊婦や小児への使用が禁止され、欧米各国でパラジウムのリスクが広く認識されるようになったのです。
近年、パラジウムは世界的に価格が高騰しており、リスクだけでなく治療費という観点からも使いづらい状況になっています。
桜新町駅前歯科は身体の健康面も考慮した歯科治療を提供しています
今回は、日本と海外(欧米)の修復治療の材質の違いについてお話ししました。お伝えしたように、日本では、保険診療の適応を受けているコンポジットレジンや金銀パラジウム合金が大きなシェアを占めています。
ただ、金銀パラジウム合金は、日本ではコスト面のメリットがあるものの、健康上の懸念や材料費の高騰といった理由から、欧米ではほとんど使用されていません。
桜新町駅前歯科では、見た目の美しさだけでなく、健康面も重視した歯科治療を重視しており、詰め物や被せ物では、セラミックを推奨しています。セラミック治療の利点でもお伝えしているように、セラミックは白く美しいことに加え、金属アレルギーを起こすことがなく、耐久性も高くて汚れも付着しにくいという優れた特長があります。
もちろん、患者様の症状やニーズはそれぞれ異なりますから、丁寧なカウンセリングを通じ、お一人お一人に最適な詰め物や被せ物ををご案内いたします。もし、歯科治療で使用する材料についてご質問やご相談があれば、ぜひ桜新町駅前歯科までご連絡ください。